内部監査と内部統制の違いとは?
企業経営の健全性や法令順守を強化するうえで欠かせない「内部監査」と「内部統制」。両者は密接に関連していますが、それぞれの目的や役割には明確な違いがあります。
この記事では、自社の内部統制構築を任された担当者向けに、両者の違いや関係性、具体的な実施の流れまでをわかりやすく解説します。
内部統制とは?
内部統制とは、企業が法令を守りながら経営目標を達成するために、リスクを管理し、業務を効率的かつ適正に行うための仕組みです。単なるルールや手続きの集合ではなく、経営者から現場担当者まで全社的に関わる「マネジメントの仕組み」として位置づけられます。
内部統制の実施目的
業務の有効性と効率性の向上
業務プロセスを標準化し、役割や責任を明確にすることで、無駄やミスを削減します。これにより、業務のスピードと品質を同時に高めることができます。
財務報告の信頼性の確保
売上や費用、資産などの会計処理を正確に行い、財務諸表の信頼性を高めることが目的です。株主や取引先など、外部関係者との信頼構築にもつながります。
法令遵守と社内ルールの徹底
コンプライアンス違反を防ぐため、従業員が社内ルールや法律を守るよう、仕組みとして管理します。内部通報制度などもこの目的に含まれます。
企業資産の保全
現金や在庫、機密情報などを不正やミスから守るための対策を講じます。たとえば、アクセス権限の管理や定期的な棚卸しなどが含まれます。
内部監査とは?
内部監査とは、企業内部に設置された独立性を持つ専門部門が、経営活動全般や内部統制の運用状況について、客観的な視点から検証・評価する活動です。これは経営者にとって、自社の業務プロセスが健全かどうかを把握し、改善の方向性を定めるための重要な情報源となります。
内部監査の実施目的
リスクの早期発見
業務や財務処理の中に潜むリスクや不正の兆候を見つけ、重大な問題になる前に対応します。予兆をつかむことで、トラブルの回避が可能になります。
内部統制の運用状況の評価
制度として整備された内部統制が、現場で正しく運用されているかを検証します。机上の空論に終わらない実効性のある統制体制を築くための基盤です。
改善提案による経営支援
監査を通じて得た課題をもとに、業務効率化やコスト削減に向けた改善提案を行います。経営陣に対して意思決定の材料を提供する役割も担います。
組織の健全性の維持と向上
内部監査は、単なる「監視」ではなく、企業全体の健全な運営を支える存在です。透明性を高め、信頼性のある組織づくりに貢献します。
内部統制と内部監査の関係
内部統制の目的は、不正の防止や業務の効率化、法令遵守、資産の保全といった「企業の経営活動を安定的に遂行するための仕組み」を整えることにあります。これは業務を「正しく進めるためのルールや体制」とも言えます。
一方、内部監査の目的は、その内部統制が実際に現場で機能しているかを「チェックする」ことです。つまり、内部統制を評価し、問題点や改善点を経営層に報告・提言する役割を担います。
このように、内部監査は内部統制の効果を「検証する立場」にあり、両者は目的も役割も異なりながら、相互に補完し合う関係にあります。
内部統制と内部監査の違い
目的の違い:仕組みの運用とその検証
内部統制は、「不正やミスを未然に防ぎ、業務を円滑に進めるための仕組み」です。具体的には、承認フローの整備や職務分掌、アクセス権限の管理などが該当します。
一方、内部監査は、「その仕組みが現場で正しく運用されているかを確認する活動」です。たとえば、経費精算の承認が実際にルール通りに行われているかを検証することが監査の役割です。
実施主体の違い:現場 vs 独立部門
内部統制の運用は、主に各部署の管理職や担当者が行います。たとえば、営業部門が売上伝票を入力し、上長が承認するといった日常業務の中で実施されます。
対して、内部監査の実施は「監査部門」や「内部監査室」といった独立した部門が担当します。他部署と利害関係を持たない立場からチェックを行うため、客観性と中立性が確保されます。
タイミングの違い:事前・日常 vs 定期・事後
内部統制は、業務を進める「事前」や「日常」のタイミングで機能します。ミスや不正が起きないよう、あらかじめ業務のルールを設定しておくのが基本です。
一方、内部監査は、一定期間ごとに「事後的」に実施されます。実際にルールが守られていたか、想定外の問題が発生していないかを後から確認し、必要に応じて改善提案を行います。
機能の違い:予防と発見
内部統制は「予防的統制」として、不正や誤りを未然に防ぐ機能を持ちます。たとえば、金銭出納における二重チェック体制などがそれにあたります。
内部監査は「発見的統制」として、発生した不正やミスを早期に発見し、経営者に報告する役割を担います。さらに、同様の問題が再発しないよう、改善策の提示まで行うのが特徴です。
内部監査による不正の発見と抑止効果
内部監査は、業務の適正性をチェックする過程で不正や不適切な処理の兆候を発見することがあります。これにより、企業は早期に問題に気づき、迅速に対応できます。
さらに、内部監査が定期的に行われているという事実そのものが、従業員の不正抑止にもつながります。「チェックされている」という意識が不正のハードルを高め、組織全体の統制意識を醸成します。
内部統制と内部監査を活用したPDCAサイクルの構築
内部統制と内部監査は、PDCA(Plan→Do→Check→Act)の枠組みで考えると理解しやすくなります。内部統制はPlan(計画)とDo(実行)を担い、内部監査はCheck(評価)を担当します。その評価結果に基づきAct(改善)を実行することで、組織全体の統制品質が継続的に向上します。
このサイクルをうまく活用することで、企業はリスクへの対応力を高め、変化する環境にも柔軟に適応することが可能になります。
しています!
上智大学経済学部卒業。大原簿記学校講師、青山監査法人(当時)勤務を経て、1998年KPMGニューヨーク事務所に入社。
2002年以降は、KPMG東京事務所(現あずさ監査法人)にて外資系企業の法定監査、デューデリジェンス、SOX法対応支援業務を担当する。
現在は、経営コンサルタントとして、内部統制構築支援やIFRSコンバージョン支援に携わるとともに、各種実務セミナー講師としても活躍中。
著書『フローチャート式ですぐに使える内部統制の入門と実践』他。
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