内部統制におけるアサーションとは?
企業の健全な経営とガバナンス強化を図るために、内部統制の整備が重要視されています。その中でも、「アサーション」という概念は、財務報告の信頼性や業務プロセスの妥当性を支える柱となるものです。
しかし、初めて内部統制に取り組む担当者にとって、「アサーション」と聞いても具体的に何を指すのかイメージしづらいこともあるでしょう。本記事では、アサーションの基本概念から5つの分類、そして実務での活用方法までを丁寧に解説します。
アサーションとは何か?会計監査との関連
アサーション(Assertion)とは、財務諸表に記載された取引・残高・開示情報などについて、経営者が正確であると主張している事項を意味します。
そして監査実務においては、これらのアサーションが監査人にとっての判断基準(監査要点)となります。監査人は各アサーションをもとに監査手続を実施し、財務報告の正確性を検証します。
会計監査では、監査人がこれらのアサーションに対して検証を行うことで、財務諸表の信頼性を確保しています。そのため、内部統制の整備だけでなく、監査対応の準備にも直結します。
なぜアサーションが重要なのか
アサーションは、内部統制の整備において「何を保証すべきか」を示す基準になります。たとえば、在庫管理であれば「在庫が実際に存在しているか」が問われます。
このように、アサーションをもとにリスクや不備を洗い出すことで、業務プロセスの透明性と正確性を確保できるのです。
経営者と監査人の視点の違い
経営者は「業務の正しさ」を保証する立場にあり、監査人は「その主張が妥当か」を検証する立場です。
両者の視点が異なるからこそ、アサーションという共通のフレームワークが重要になります。
5つのアサーション分類と内容
アサーションは、以下の5つに分類され、それぞれ異なる観点から財務情報の正確性を担保します。
1.実在性(Existence)
実在性とは、財務諸表に記載された取引や資産が、実際に存在していることを意味します。
このアサーションは、架空売上の計上や在庫の水増しなど、企業の信頼性を損なう重大なリスクを防ぐための基本的な観点となります。
2.網羅性(Completeness)
網羅性は、すべての取引や債務、義務が漏れなく帳簿に記録されているかを検証する考え方です。
内部統制の現場では、月末や四半期末の処理において、発生済みで未計上の取引がないかを重点的に確認することが求められます。
3.権利と義務(Rights and Obligations)
このアサーションでは、帳簿に記録された資産が自社に帰属し、計上された負債が自社の義務であることを確認します。
たとえば、委託在庫の誤計上やリース資産など、権利関係が曖昧なケースでの誤認を防ぐ視点です。
4.評価と配分(Valuation and Allocation)
評価と配分のアサーションは、資産や負債が適切な金額で記録され、正しい会計期間に配分されているかを確認します。
貸倒引当金や減価償却など、会計上の見積や期間配分が正確であるかが問われます。
5.表示と開示(Presentation and Disclosure)
表示と開示では、財務諸表の項目が適切に分類され、必要な情報が正確に開示されているかを確認します。
関連当事者との取引や会計方針の注記など、ステークホルダーにとって重要な情報が適切に記載されているかがポイントです。
内部統制におけるアサーションの活用方法
業務プロセスにどう反映させるか
アサーションは、業務プロセスのリスクを洗い出す際の切り口として活用されます。
例えば、販売プロセスでは「実在性」に着目し、架空売上のリスクを排除する統制を設けるなどの対策が考えられます。
リスク評価と統制活動の設計
アサーションをもとにリスク評価を行い、そのリスクを低減させるための統制活動を設計することが基本です。
出荷確認のチェックリストやダブルチェック体制の導入がこの段階で設計されます。
社内教育・ドキュメント整備のポイント
アサーションの概念を社内で共有することで、業務担当者のリスク感度を高めることができます。
教育資料や業務マニュアルにアサーション視点を取り入れることが、内部統制の実効性を高める鍵になります。
内部統制構築の進め方と留意点
アサーションを軸にしたプロセス整備
内部統制は形だけ整えても機能しません。アサーションを軸に、実際の業務プロセスに落とし込んで設計することが重要です。
形骸化を防ぐには、現場で実際に使われる業務フローへの反映が求められます。
小規模組織でも対応可能な工夫
すべてのアサーションに対して多層的なチェックを設けるのは現実的ではありません。
重点監査型のアプローチで、リスクが高い分野を特定し、重点的に管理することが有効です。
外部リソースの活用と社内理解の醸成
初めて内部統制に取り組む場合、外部コンサルタントの知見を借りるのも有効です。
ただし、社内理解と主体性がなければ内部統制は定着しません。
まとめ
アサーションは、内部統制の設計と評価において欠かせない概念です。
5つの分類を理解し業務に活かすことが、信頼性の高い内部統制構築への第一歩となるのではないでしょうか。
しています!
上智大学経済学部卒業。大原簿記学校講師、青山監査法人(当時)勤務を経て、1998年KPMGニューヨーク事務所に入社。
2002年以降は、KPMG東京事務所(現あずさ監査法人)にて外資系企業の法定監査、デューデリジェンス、SOX法対応支援業務を担当する。
現在は、経営コンサルタントとして、内部統制構築支援やIFRSコンバージョン支援に携わるとともに、各種実務セミナー講師としても活躍中。
著書『フローチャート式ですぐに使える内部統制の入門と実践』他。
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