内部統制の不備事例
経営コンサルタントとして、内部統制構築支援やIFRSコンバージョン支援に携わるとともに、各種実務セミナー講師としても活躍中。
内部統制報告制度とは
内部統制報告制度は、金融商品取引法に基づいて、企業が財務報告に関する内部統制の整備・運用状況を評価した結果を報告する制度のことです。2006年に導入され、上場企業に対して毎年、内部統制報告書の作成と提出が義務付けられています。
この制度は、財務報告の信頼性を確保し、投資家やステークホルダーへの投資に資するための情報提供を目的としています。内部統制報告書は、外部監査人による監査も行われ、内部統制の有効性が確認されます。
内部統制の評価結果・結論
企業が評価した内部統制の評価結果もしくは結論は、内部統制報告書に記載されますが、以下のいずれかとなります。
【有効】重要な不備がない
内部統制の評価において、投資家に開示すべき重要な不備は見つからず、有効と判断された場合に表明されます。
【限定付き有効】一部手続が実施できなかったが有効
合併などの理由で評価手続の一部が実施できなかったが、他の部分の評価では重要な不備が検出されず、全体としては有効と判断された場合に表明されます。
【非有効】重要な不備があり有効でない
評価において、投資家に開示すべき重要な不備があり、内部統制が有効でないと判断された場合に表明されます。
【意見不表明】評価結果を表明できない
重要な評価手続が実施できなかったため、内部統制が有効かどうかの判断ができず、結論を表明できない場合に表明されます。
不備や重要な不備とされるのはどんなものか?
内部統制報告において不備とされるものには、整備上の不備と運用上の不備があります。
整備上の不備とは、内部統制が存在しない、又は規定されている内部統制では内部統制の目的を十分に果たすことができない場合です。
例えば、異なる資料と突合せを実施している、間違いを見つけても修正されていない、決算に反映されていないなど会社が定める内部統制自体が適切に設計されていない場合の不備です。
運用上の不備とは、整備段階で意図したように内部統制が運用されていない、又は運用上の誤りが多い、又は内部統制を実施する者が統制内容や目的を正しく理解していない場合の不備です。
これら不備のうち、金額的もしくは質的観点から財務報告の信頼性を損ない投資家の意思決定に影響を与える可能性があるものを、「開示すべき重要な不備」といいます。
開示すべき重要な不備の金額的な目安としては、連結税引前利益の5%となります。
開示すべき重要な不備の例
全社統制の不備
取締役が不正行為を主導するなど、組織全体に関わる統制が不十分な場合、全社的なガバナンス、コンプライアンス体制やリスク管理体制に不備があると判断されます。
決算・財務報告プロセスの不備
経理や会計処理のミス、不適切な会計基準の適用、見積の誤り、決算書の作成誤りなど、決算や財務報告に関連する誤りが不備に含まれます。
その他の業務プロセスの不備
棚卸の手順が統一されていない場合や、仕入担当者が定められている手順から外れた発注をすることができてしまう場合、出荷を確認せずに売上計上している場合などで、当該業務プロセスにおける不備と判断されます。
これら不備のうち、金額的もしくは質的観点から財務報告の信頼性を損ない投資家の意思決定に影響を与える可能性があるものが、「開示すべき重要な不備」として開示されます。
不備が発生したら
不備の特定と原因分析
指摘された不備の内容を詳細に分析し、どのプロセスや手続きに問題があったのかを明確にします。その原因をさらに分析し、不備の本質を理解することが重要です。
改善計画の策定
特定された不備に対して、具体的な改善策を設計し、実行可能な計画を策定します。改善計画は根本原因に対処することを目的とします。
監査法人との協議
監査法人と事前に協議し、改善計画の妥当性を確認します。評価範囲外から見つかっている場合、評価範囲を拡大しなければならない可能性があります。
改善計画の実施とフォローアップ
策定した改善計画を迅速に実施し、その効果を評価します。必要に応じて追加の改善を行い、内部統制が適切に機能していることを確認します。
報告と開示
期末までに不備が改善できない場合は、不備の内容と改善策を整理したうえで、重要性の判断を行います。重要な不備である場合、内部統制報告書での開示が必要になります。
内部統制における不備は、会社の信頼性や業績に深刻な影響を与える可能性がありますが、上場準備期においては、あって当たり前のものでもあります。
否定的に捉える必要はなく、この段階で見つかったことで、将来の大きな損失を回避できたと考え、前向きに是正に取り組みましょう。
改善策を考えるうえでは、不備を個人の問題と考えるのではなく、会社としてのしくみの問題と捉えることが重要です。原因を分析し、改善するためには、どのように業務プロセスなどを変更すればよいか検討してみましょう。
他社での対応例や効率的な方法を知りたい場合には、専門知識を持つコンサルタントに相談してみましょう。
しています!
上智大学経済学部卒業。大原簿記学校講師、青山監査法人(当時)勤務を経て、1998年KPMGニューヨーク事務所に入社。
2002年以降は、KPMG東京事務所(現あずさ監査法人)にて外資系企業の法定監査、デューデリジェンス、SOX法対応支援業務を担当する。
現在は、経営コンサルタントとして、内部統制構築支援やIFRSコンバージョン支援に携わるとともに、各種実務セミナー講師としても活躍中。
著書『フローチャート式ですぐに使える内部統制の入門と実践』他。
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