内部統制の是正措置とは?
内部統制の評価プロセスで不備が発覚したとき、「次に何をすべきか」が分からず、焦りを感じる担当者は少なくありません。本記事では、内部統制における是正措置の意味・必要になるケース・進めるべき5つのステップ・実務で押さえておきたいポイントなどを体系的に解説します。不備を適切に是正し、次の評価サイクルに備えるための具体的な手順として、ぜひ参考にしてください。
内部統制における是正措置の定義と目的
是正措置とは、内部統制の評価で発見された不備(整備上の欠陥・運用上の欠陥)に対して、原因を特定し改善を実施・完了させる一連の活動のことです。「欠陥があった」という事実を記録するだけでなく、それが再発しない仕組みを整えることが目的です。
単なる「その場しのぎの対処」ではなく、組織として内部統制の有効性を高めるための改善プロセスを是正措置と呼びます。不備の種類・原因・影響範囲に応じて、取るべき対応内容は異なります。
まず「どのような不備があったのか」を正確に把握することが、是正措置の出発点です。不備の定義・分類・具体的な事例については以下の記事で詳しく解説しています。
是正措置が必要になるケース
是正措置が必要になるのは、主に次の2種類の不備が発覚した場合です。
- 整備上の不備:承認フロー・業務規程・マニュアルなど、統制そのものが存在しない、または適切に設計されていない状態
- 運用上の不備:統制の仕組みは整っているが、実際の業務では適切に機能・実施されていない状態
この2種類では、是正措置の方向性が大きく異なります。整備上の不備は「仕組みを作る・直す」ことが必要で、運用上の不備は「周知・教育・監視の強化」が中心です。
内部統制の是正措置を進める5つのステップ
1.原因の特定と分析
不備が発覚したとき、最初にすべきことは「なぜその不備が起きたのか」を掘り下げる原因分析です。特定の担当者のミスや怠慢に帰結させるのではなく、「組織の仕組みとしてどこに問題があるか」という視点で捉えることが大切。
根本原因にたどり着かなければ、表面的な対応をしても同じ不備が再発します。業務フローや規程の設計、承認権限の運用状況、担当者への教育体制など、複数の観点から原因を洗い出しましょう。
2.改善計画の策定
原因が特定できたら、それに対応した改善策を「いつまでに・誰が・何をするか」の形で明文化した改善計画書を作成します。実行可能なスケジュールと担当者を具体的に設定することが重要です。
なお、評価期間内(期末日前)に是正措置が完了できるかどうかによって、内部統制報告書への記載方法は変化するもの。期末日後に実施した是正措置は評価結論には影響しませんが、「その後の対応状況」として任意記載できる場合があります。
3.監査法人・監査役への報告と協議
発見した不備と策定した改善計画は、速やかに監査法人および監査役に報告・共有します。特に、重要な欠陥(開示すべき重要な不備)に発展する可能性があると判断した場合は、早期の協議が不可欠です。
監査法人との協議を先延ばしにすると、評価結論の方向性や開示対応の判断が後手に回り、期末処理を圧迫するリスクがあります。不備を把握した段階で速やかに情報を共有し、対応の方向性をすり合わせることを優先してください。
4.改善の実施とモニタリング
計画に基づき、改善活動を実施します。具体的には次のような対応が考えられます。
- 整備上の不備:規程・手順書・承認フローの新設または改訂
- 運用上の不備:担当者への研修・周知徹底、ダブルチェック体制の導入、モニタリング強化
5.是正完了の確認と報告
改善活動が計画通りに実施され、統制が有効に機能していることを再テストで確認します。確認が取れた段階で、監査法人に是正完了を報告し、内部統制報告書における記載内容について確認・合意を取得。
5つのステップを文書として記録・保管しておくことで、次年度の評価や監査対応のエビデンスとしても活用できます。
是正措置の実務で押さえておきたいポイント
期末日後に是正措置を講じた場合の扱い
内部統制の有効性は、原則として評価基準日(事業年度末日)時点で判断されます。そのため、期末日後に是正措置を実施しても、その年度の評価結論を「有効」に変えることはできません。
ただし、金融庁の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、期末日後に是正措置が講じられた場合、その旨を内部統制報告書の任意記載事項として示せます。開示上の対応については、監査法人と事前に協議して方針を確認してください。
参照元:金融庁公式HP「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」【PDF】(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/kijun/20191206_naibutousei_kansa.pdf)
整備上の不備と運用上の不備で対応アプローチが異なる
整備上の不備は、規程や承認フローといった統制の仕組み自体が存在しない・不十分な状態のため、規程の新設や業務フローの再設計が必要になります。一方、運用上の不備の場合、規程自体は存在しているため、「実際に守られるための仕掛け」(研修の実施・ダブルチェックの導入・アラート設定など)を中心に検討します。
是正計画を立てる前に、まず「どちらの不備か」を正確に見極めることが、効率的な対応への近道です。
重要な欠陥(開示すべき重要な不備)に発展する可能性がある場合
不備の中でも、財務報告に重大な影響を及ぼす可能性があると判断された場合は「重要な欠陥」(開示すべき重要な不備)として扱われ、内部統制報告書への開示が求められます。重要な欠陥かどうかの判断基準は一定の目安(連結税引前利益の5%など)がありますが、その適用は個別事情により異なるため、監査法人との協議が必須です。
重要な欠陥の判断基準や開示対応については以下の記事も参考にしてください。
是正措置を自社だけで進めるのが難しいときは
不備の規模や原因の複雑さによっては、自社の担当者だけで原因分析から監査法人との協議までを完結させることが難しいケースもあります。特に、内部統制担当者が少ない体制の企業や、初めてJ-SOX対応に取り組む上場準備中の企業では、専門知識と経験を持った外部支援を活用することが現実的な選択です。
しています!
上智大学経済学部卒業。大原簿記学校講師、青山監査法人(当時)勤務を経て、1998年KPMGニューヨーク事務所に入社。
2002年以降は、KPMG東京事務所(現あずさ監査法人)にて外資系企業の法定監査、デューデリジェンス、SOX法対応支援業務を担当する。
現在は、経営コンサルタントとして、内部統制構築支援やIFRSコンバージョン支援に携わるとともに、各種実務セミナー講師としても活躍中。
著書『フローチャート式ですぐに使える内部統制の入門と実践』他。
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